CHINESE HISTORY TIMELINE
中国史年表

「中国五千年史」- 新石器時代から現代まで、王朝・人物・出来事をスクロールして辿たどる

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中国の歴史書(史書)を読む

中国では古くから、王朝ごとに過去の歴史を記録することが国家の重要な事業とされてきた。新しい王朝は前の王朝の歴史をまとめ、自らの正統性を示すとともに、後の為政者いせいしゃへの教訓とした。こうして国家が公認した歴史書を「正史せいし」と呼び、『史記』から『明史』までの24書は「二十四史にじゅうしし」と総称そうしょうされる。ここでは正史に加え、日本でも広く読まれてきた代表的な歴史書を、成立の古い順に紹介しょうかいする。

紀伝体と編年体

中国の歴史書の書き方には大きく二つの形式がある。「紀伝体きでんたい」は、皇帝こうていの年代記(本紀)と人物の伝記(列伝)を柱に、制度史や年表を組み合わせる形式で、『史記』に始まり歴代の正史に受け継つがれた。人物像はよくわかるが、一つの出来事が複数の伝に分かれて記される。一方「編年体へんねんたい」は、出来事を年月の順に並べて記す形式で、『春秋』や『資治通鑑しじつがん』が代表例。時代の流れを追いやすいのが特長である。

代表的な歴史書

尚書(書経)
宋末元初そうまつげんしょの金履祥きんりしょうによる注釈本ちゅうしゃくぼん『尚書表注しょうしょひょうちゅう』の冒頭ぼうとう(台湾たいわん・国家図書館蔵) / 台湾たいわん国家図書館 / Wikimedia Commons(パブリックドメイン)
1尚書しょうしょ(書経しょきょう)成立:周〜戦国
記言体著者:編者不詳ふしょう(孔子こうしの編纂へんさんと伝わる)

伝説の聖王から周までの「言葉」を集めた最古の史書

堯ぎょう・舜しゅん・禹うといった伝説上の聖王から夏・殷いん・周の君主や重臣の詔勅しょうちょく・訓戒くんかい・誓ちかいの言葉を集めた書物。出来事を年代順に並べるのではなく、為政者いせいしゃの発言を記録する形式で、儒教じゅきょうの経典「五経」の一つとして重んじられた。秦しんの焚書ふんしょで多くが失われ、後に伝えられたテキストには後世の偽作ぎさくとされる部分も含ふくまれる。

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春秋・春秋左氏伝
16世紀に刊行された『春秋左氏伝』の冒頭ぼうとうページ / Wikimedia Commons(パブリックドメイン)
2春秋しゅんじゅう・春秋左氏伝しゅんじゅうさしでん成立:春秋〜戦国
編年体著者:孔子こうし(『春秋』)/左丘明さきゅうめい(『左伝』と伝わる)

「春秋時代」の名の由来となった魯国ろこくの年代記

『春秋』は魯ろの国の紀元前722年から前481年までの出来事を年月順に簡潔に記した年代記で、孔子こうしが編纂へんさんしたとされる。わずかな言葉の選び方に褒貶ほうへん(善悪の評価)を込こめる書き方は「春秋の筆法しゅんじゅうのひっぽう」と呼ばれた。その簡潔な本文に詳くわしい物語や背景を補った注釈書ちゅうしゃくしょが『左伝さでん』で、戦や外交、人物の言動を生き生きと描えがき、後の歴史叙述じょじゅつに大きな影響えいきょうを与あたえた。

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戦国策
古い刊本の『戦国策』の冒頭ぼうとうページ / Wikimedia Commons(パブリックドメイン)
3戦国策せんごくさく成立:前漢(前1世紀に編纂へんさん)
国別体著者:劉向りゅうきょう(編纂へんさん)

遊説家たちの弁論と策略を国ごとにまとめた書

戦国時代に諸国を渡わたり歩いた蘇秦そしん・張儀ちょうぎら縦横家の献策けんさくや弁舌を、秦しん・斉せい・楚そ・趙ちょうなど国別に整理した書物。前漢末の劉向りゅうきょうが宮廷きゅうていに残る資料を校訂こうていしてまとめ、「戦国」という時代名もこの書名に由来する。「蛇足だそく」「漁夫の利ぎょふのり」「隗より始めよかいよりはじめよ」など、日本でもなじみ深い故事成語の出典が数多く含ふくまれる。

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史記
唐代とうだいに書写された『史記』河渠書かきょしょの写本。巻末に司馬遷しばせん自身の論評が記される(東京国立博物館蔵) / 東京国立博物館 / Wikimedia Commons, CC BY 4.0
4史記しき成立:前漢(前91年頃ごろ)
紀伝体著者:司馬遷しばせん

伝説の黄帝こうていから漢の武帝ぶていまで、約2000年を描えがいた「正史」の第一

前漢の歴史家司馬遷しばせんが、父司馬談しばたんの遺志を継ついで完成させた通史。武帝ぶていの怒いかりに触ふれて宮刑きゅうけいという屈辱的くつじょくてきな刑罰けいばつを受けながらも執筆しっぴつを続けた。帝王ていおうの年代記「本紀」、諸侯しょこうの家の歴史「世家」、個人の伝記「列伝」、年表「表」、制度史「書」を組み合わせた紀伝体という形式を確立し、以後の正史はすべてこれにならった。項羽こううと劉邦りゅうほうの戦いや「鴻門の会こうもんのかい」、刺客しかくや商人の列伝など、人間ドラマとしての文学的評価も高い。

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漢書
南宋なんそう・紹興年間しょうこうねんかんに刊行された『漢書』地理志(倭人わじんの記述を含ふくむ巻) / Wikimedia Commons(CC0)
5漢書かんじょ成立:後漢(1世紀後半)
紀伝体・断代史著者:班固はんこ(妹の班昭はんしょうが補完)

一つの王朝だけを扱あつかう「断代史」の手本

前漢の建国から王莽おうもうの新の滅亡めつぼうまでを扱あつかった歴史書。『史記』が複数の時代をまたぐ通史だったのに対し、一王朝の歴史だけをまとめる「断代史」の形式をとり、以後の正史の基本形となった。父班彪はんぴょうが始め、班固はんこが書き継つぎ、班固の死後は妹の班昭はんしょうが未完部分を仕上げた。地理志には「楽浪海中らくろうかいちゅうに倭人わじんあり」と、日本についての最古級の記述が見える。

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三国志
トルファンで出土した東晋とうしん時代の写本『三国志』呉書ごしょ・歩騭ほしつ伝の断片 / Wikimedia Commons, CC BY-SA 3.0
6三国志さんごくし成立:西晋せいしん(3世紀末)
紀伝体著者:陳寿ちんじゅ(注釈ちゅうしゃく:南朝宋なんちょうそうの裴松之はいしょうし)

魏ぎ・呉ご・蜀しょくの正史。卑弥呼ひみこが登場する「魏志倭人伝ぎしわじんでん」を含ふくむ

蜀しょくに仕え、後に西晋せいしんの官僚かんりょうとなった陳寿ちんじゅが著した魏ぎ・呉ご・蜀しょく三国の正史。晋しんが魏ぎから禅譲ぜんじょうを受けた王朝であったため、魏ぎを正統として扱あつかっている。記述は簡潔で、後に南朝宋なんちょうそうの裴松之はいしょうしが多くの史料を引いて詳細しょうさいな注を付けた。小説『三国志演義』とは別物で、こちらは史実を記録した歴史書である。「魏書ぎしょ」東夷伝倭人条とういでんわじんじょう、通称つうしょう「魏志倭人伝ぎしわじんでん」には邪馬台国やまたいこくと女王卑弥呼ひみこの記録があり、日本古代史の第一級史料となっている。

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後漢書
南宋なんそう・紹興年間しょうこうねんかんに刊行された『後漢書』 / Wikimedia Commons(パブリックドメイン)
7後漢書ごかんじょ成立:南朝宋なんちょうそう(5世紀)
紀伝体著者:范曄はんよう

光武帝こうぶていの再興から後漢の滅亡めつぼうまでを描えがく

後漢王朝の歴史を記した正史。成立は『三国志』よりも後の南朝宋なんちょうそうの時代で、范曄はんようがそれまでに書かれた複数の後漢史を整理して著した。蔡倫さいりんの製紙法改良や、黄巾の乱こうきんのらんなど後漢末の混乱も描えがかれる。東夷伝とういでんには、57年に倭わの奴国なこくが使者を送り光武帝こうぶていから印綬いんじゅを授かった記事があり、志賀島で発見された金印「漢委奴国王かんのわのなのこくおう」との関係で知られる。

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貞観政要
『貞観政要じょうがんせいよう』の主人公・唐とうの太宗たいそう(李世民りせいみん)の肖像画しょうぞうが / Wikimedia Commons(パブリックドメイン)
8貞観政要じょうがんせいよう成立:唐とう(8世紀前半)
言行録著者:呉兢ごきょう

名君・唐とうの太宗と家臣の問答を記した「帝王学ていおうがくの教科書」

唐とうの二代皇帝こうてい・太宗たいそう(李世民りせいみん)と、魏徴ぎちょう・房玄齢ぼうげんれいら名臣たちの政治をめぐる問答を、テーマ別にまとめた書。太宗の治世は「貞観の治じょうがんのち」と称たたえられ、臣下の厳しい諫言かんげんを受け入れた姿勢がよく知られる。日本でも北条政子や徳川家康が愛読したと伝えられ、現代でもリーダー論の古典として読まれている。

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資治通鑑
司馬光しばこう自筆の『資治通鑑しじつがん』草稿そうこう(中国国家図書館蔵) / 中国国家図書館 / Wikimedia Commons(パブリックドメイン)
9資治通鑑しじつがん成立:北宋ほくそう(1084年)
編年体・通史著者:司馬光しばこう

戦国時代から五代十国まで1362年を年代順に描えがいた大著

北宋ほくそうの政治家・歴史家司馬光しばこうが、約19年をかけて完成させた全294巻の大編年史。紀元前403年(韓かん・魏ぎ・趙ちょうの三家が諸侯しょこうと認められた年)から959年までを、年月順に一続きに叙述じょじゅつする。書名は「治世に資する鏡」という意味で、皇帝こうていが政治の手本や戒いましめとするために編まれた。紀伝体の正史では人物ごとに散らばる出来事を一つの流れで追えるため、通史としての評価が非常に高い。

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十八史略
日本で刊行された『立斎先生標題解註音釈十八史略りっさいせんせいひょうだいかいちゅうおんしゃくじゅうはっしりゃく』。右ページに書名、左ページに要約元の「十七史」の書名が並ぶ(国立公文書館蔵) / 国立公文書館 / Wikimedia Commons
10十八史略じゅうはっしりゃく成立:元(13世紀末〜14世紀初め)
編年体・通史(簡略本)著者:曾先之そうせんし

日本で中国史入門書として広く読まれた要約版

『史記』をはじめとする17の正史と宋代そうだいの史料、あわせて18の歴史書を要約し、伝説の時代から南宋なんそうの滅亡めつぼうまでを一冊にまとめた初学者向けの歴史書。中国本国ではそれほど重視されなかったが、日本では室町時代に伝わり、江戸時代えどじだいから明治にかけて漢文の教科書として広く読まれた。「臥薪嘗胆がしんしょうたん」「鶏口牛後けいこうぎゅうご」などの故事も多く収められ、日本人の中国史のイメージ形成に大きな役割を果たした。

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正史「二十四史」一覧

清の乾隆帝けんりゅうていの時代に正史として公認された24の歴史書。「成立」は書物が編纂へんさんされた時代を示す。民国期に編まれた『新元史』や、未定稿みていこうの『清史稿しんしこう』を加えて「二十五史」「二十六史」と呼ぶこともある。

#書名主な編者成立
1史記司馬遷しばせん前漢
2漢書班固後漢
3後漢書范曄はんよう南朝宋なんちょうそう
4三国志陳寿ちんじゅ西晋せいしん
5晋書しんじょ房玄齢ぼうげんれい 他唐とう
6宋書そうじょ沈約しんやく南朝梁なんちょうりょう
7南斉書なんせいしょ蕭子顕しょうしけん南朝梁なんちょうりょう
8梁書りょうしょ姚思廉ようしれん唐とう
9陳書ちんしょ姚思廉ようしれん唐とう
10魏書ぎしょ魏収ぎしゅう北斉ほくせい
11北斉書ほくせいしょ李百薬りひゃくやく唐とう
12周書令狐徳棻れいことくふん 他唐とう
13隋書ずいしょ魏徴ぎちょう 他唐とう
14南史李延寿りえんじゅ唐とう
15北史李延寿りえんじゅ唐とう
16旧唐書くとうじょ劉昫りゅうく 他後晋こうしん
17新唐書しんとうじょ欧陽脩おうようしゅう・宋祁そうき北宋ほくそう
18旧五代史薛居正せつきょせい 他北宋ほくそう
19新五代史欧陽脩おうようしゅう北宋ほくそう
20宋史そうし脱脱とくと 他元
21遼史りょうし脱脱とくと 他元
22金史脱脱とくと 他元
23元史宋濂そうれん 他明
24明史張廷玉ちょうていぎょく 他清

歴史書をもとに書かれた小説「四大名著」や、史書に由来する故事成語も別ページで紹介しょうかいしています。