「中国五千年史」- 新石器時代から現代まで、王朝・人物・出来事をスクロールして辿る
登場人物は実在した? 物語と『史記』を比べる
『キングダム』は、原泰久が『週刊ヤングジャンプ』で2006年から連載している歴史漫画です。舞台は紀元前3世紀、中国の戦国時代の末期。下僕の少年・信が「天下の大将軍」を、秦の若き王・嬴政(のちの始皇帝)が中華統一を目指し、ともに乱世を駆け上がっていきます。登場人物の多くは司馬遷の『史記』に名前が残る実在の人物ですが、史書の記述はほんの数行ということも少なくありません。このページでは作品の紹介とあわせて、主な登場人物と戦いを史実と比べ、アニメ・実写映画もまとめて紹介します。
物語は、秦の田舎で下僕として育った信と漂の二人の少年から始まります。王宮に召し抱えられた漂は、秦王・嬴政の影武者として命を落とし、信は漂に瓜二つの政と出会います。王弟成蟜の反乱から政を守った信は、戦場で武功を重ねて百人将、千人将、将軍へと昇っていきます。
王騎・李牧・桓騎といった強烈な個性を持つ将軍たちの駆け引きと、数十万の軍がぶつかる迫力ある合戦の描写が大きな魅力です。2013年に第17回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞し、累計発行部数は1億2000万部を超えています(2025年10月時点)。物語は秦国内の争いを描く前半と、六国を滅ぼしていく「六国征覇編」に分かれ、2026年10月時点の最新刊は80巻です。
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史実の出典は主に『史記』です。人物ごとに、史書との距離を三つに分けて示しました。
戦争孤児の下僕から身を起こし、親友・漂との約束である「天下の大将軍」を目指す主人公。飛信隊を率いて武功を重ね、将軍に昇りつめる。
秦の将軍・李信は実在する。『史記』では前226年に燕の太子丹を追撃して手柄を立て、前225年には20万の兵で楚を攻めたが、項燕に大敗した。その後王賁とともに燕・斉の平定に加わっている。下僕出身という生い立ちや若き日の活躍は記録がなく、作者の創作。前漢の名将・李広は李信の子孫とされる。
13歳で即位した秦の若き王。趙での過酷な人質生活を経て、武力による中華統一で戦争のない世をつくろうと決意する。
のちの始皇帝。前259年に趙の都邯鄲で生まれ、前247年に13歳で秦王となった。前221年に六国を滅ぼして天下を統一する。作中の「中華を一つにして戦をなくす」という理想は創作で、史実の始皇帝は統一後に厳しい法と大工事で民を苦しめ、死後まもなく秦は滅んだ。
昭王時代の「秦の六大将軍」の最後の一人。馬陽の戦いで龐煖と李牧の策に敗れ、矛を信に託して世を去る。
モデルは『史記』秦始皇本紀に名が見える将軍・王齮。前244年に死んだことが一行記されているだけで、人物像や馬陽での戦死はすべて創作。「六大将軍」という制度も史書にはない。
趙の三大天・宰相。知略に優れ、合従軍を組織するなど秦の前に立ちはだかる最大の敵。
趙の名将として実在。北方で匈奴を大破し、前233年の肥の戦い、前232年の番吾の戦いで秦軍を退けた。しかし前229年、秦の離間策にのった趙王によって殺され、その翌年趙は滅亡する。合従軍の総指揮は作中の脚色。
野盗あがりの秦の大将軍。残虐だが奇策に長け、黒羊丘・平陽などで勝利を重ねる。肥下の戦いで李牧に敗れ戦死。
モデルは秦の将軍・桓齮。前234年に平陽で趙軍10万を斬ったと記録される。翌年李牧に敗れ、『史記』は「走った(逃げた)」と書くだけで最期ははっきりしない。燕に亡命した樊於期と同一人物とする説もある。
仮面をかぶった謎の多い大将軍。「自分が王になる」野心を疑われながらも、鄴攻略など大きな戦で総大将を務める。
秦の統一戦争で最大の功労者。趙を滅ぼし、楚攻めでは60万の兵を求めて項燕を破った。出陣前に王へ田畑や屋敷を何度もねだり、「謀反の心はない」と示したという逸話が残る。王になる野心は作中の脚色。
名門蒙家の御曹司で、信・王賁と出世を競うライバル。楽華隊を率いる。
祖父蒙驁・父蒙武とも実在の秦の将軍。蒙恬は統一後に30万の兵で匈奴を討ち、万里の長城を築いた。始皇帝の死後、趙高らの陰謀で自害に追い込まれる。筆を発明したという言い伝えもある。
王翦の息子。誇り高い槍の名手で、玉鳳隊を率いる。信とは衝突しながら認め合う。
実在の将軍で、統一戦争の後半に大活躍した。前225年に黄河の水を引き込んで魏の都大梁を水攻めにして魏を滅ぼし、のちに燕・代、最後の斉も平定した。
暗殺一族「蚩尤」出身の少女。巫舞という剣技を使い、飛信隊の副長として信を支える。
『史記』には前229年、王翦とともに趙を攻めた将として名前が出るだけ。性別の記述がないため、作者は女性として描いたと語っている。蚩尤の一族という設定は創作。
秦の軍総司令。呂不韋陣営から政の側へ移り、統一戦争の作戦を立てる。楚の王族の血を引く。
楚の公子で、秦で嫪毐の乱の鎮圧にあたった。のちに楚へ戻り、項燕に擁立されて秦に抵抗し、前223年に戦死したとされる。作中で秦の軍師であるほどの記録はない。
秦の相国。巨大な財力と人脈で政と王権を争う。
大商人から秦の宰相にまで昇った実在の人物。人質だった子楚(政の父)を王位につけ、学者を集めて『呂氏春秋』を編ませた。嫪毐の乱に連座して失脚し、前235年に自ら毒を飲んだ。『史記』には政の実の父だとする説も書かれている。
政の異母弟。物語の冒頭で王位を奪う反乱を起こすが、のちに政と和解し、屯留で命を落とす。
長安君成蟜として実在。前239年、趙を攻める途中の屯留で反乱を起こし死んだと記録される。1巻の「王弟反乱」で王宮を乗っ取る話は創作。
「武神」を名乗る趙の三大天。王騎や麃公を討つ圧倒的な武人。
趙の将軍として実在し、前242年に燕の劇辛を破り、前241年の合従軍では秦の蕞を攻めた。兵法書の著者とも伝わり、むしろ知将・論客の顔を持つ。武神という人物像は創作。
かつての趙の三大天。魏に亡命し、山陽の戦いで秦と戦う。
藺相如との「刎頸の交わり」で知られる趙の名将。趙王に疎まれて魏へ、さらに楚へ移り、楚で没した。山陽で秦と戦った記録はない。
山の民を束ねる美しき女王。政と同盟を結び、鄴攻略などで秦とともに戦う。
秦の将軍として実在し、鄴攻め(前236年)や邯鄲攻め(前229年)に名が見える。山の民の王で女性という設定は創作。
政の影武者として命を落とす信の親友・漂、飛信隊の軍師となる山民族の少女・河了貂、少年時代の政を趙から逃がした闇商人・紫夏。
いずれも史書に登場しない作者オリジナルの人物。とくに漂と河了貂は、記録の少ない李信の若き日を物語として膨らませるために生み出された。
作中には年号がほとんど出てきませんが、主な戦いは『史記』秦始皇本紀などの記録と対応させることができます。巻数はおおよその目安です。
| 史実の年 | 作中の戦い | 巻 | 史書の記録 |
|---|---|---|---|
| 前245年ごろ | 蛇甘平原の戦い | 5〜7巻 | 麃公が魏の巻を攻めた記録(前245年)をもとにした創作の会戦。 |
| 前244年 | 馬陽の戦い | 9〜16巻 | 王齮が死んだ年。馬陽での会戦は創作。 |
| 前242年 | 山陽攻略 | 17〜23巻 | 蒙驁が魏を攻めて20の城を取り、東郡を置いた。史実どおり。 |
| 前241年 | 合従軍(函谷関・蕞) | 25〜33巻 | 楚・趙・魏・韓などが連合して秦を攻め、龐煖が蕞に迫った。史実どおり。 |
| 前239年 | 屯留・成蟜の乱 | 34〜35巻 | 成蟜が屯留で反乱して死んだ。史実どおり。 |
| 前238年 | 加冠の儀と嫪毐の乱 | 37〜40巻 | 政の成人の儀式の年に、太后の寵臣嫪毐が反乱し鎮圧された。史実どおり。 |
| 前236年 | 鄴攻略(朱海平原) | 46〜59巻 | 王翦・桓齮・楊端和が趙の鄴などを攻め取った。大筋は史実。 |
| 前234年 | 平陽・武城の戦い | 62〜64巻 | 桓齮が趙軍を破り、10万を斬った。史実どおり。 |
| 前233年 | 肥下の戦い(宜安) | 65〜69巻 | 李牧が桓齮を破った。史実どおり。 |
| 前232年 | 番吾の戦い | 70〜72巻 | 李牧が再び秦軍を退けた。史実どおり。 |
| 前230年 | 韓の滅亡 | 73巻〜 | 内史騰が韓王安を捕らえ、六国で最初に韓が滅んだ。史実どおり。 |
長平の戦いなど作中で語られる過去の戦いも含め、戦国時代の合戦は春秋・戦国時代 合戦マップで地図とともに紹介しています。
史実をたどると、物語がこの先どこへ向かうのかが見えてきます。原作の展開を知りたくない人は読み飛ばしてください。
統一からわずか11年後の前210年、始皇帝は旅の途中で病死します。蒙恬は趙高の陰謀で自害させられ、秦は前206年に滅亡。その秦を倒した項羽は、李信を破った楚の将軍項燕の孫でした。
その後の項羽と劉邦の争いは楚漢戦争 合戦マップをご覧ください。
テレビアニメはNHKで放送され、2025年までに6シリーズが作られました。アニメーション制作はぴえろ(第3シリーズからスタジオサインポストと共同)。信の声は森田成一、嬴政は福山潤が演じています。第6シリーズの続編の制作も決まっています。
| シリーズ | 放送 | 話数 | 主な内容 |
|---|---|---|---|
| 第1シリーズ | 2012年6月〜2013年2月 | 全38話 | 王弟反乱〜馬陽の戦い |
| 第2シリーズ | 2013年6月〜2014年3月 | 全39話 | 山陽攻略〜合従軍の始まり |
| 第3シリーズ | 2020年4月〜2021年10月 | 全26話 | 合従軍編(函谷関・蕞) |
| 第4シリーズ | 2022年4月〜10月 | 全26話 | 成蟜の変・著雍攻略・毐国反乱 |
| 第5シリーズ | 2024年1月〜3月 | 全13話 | 黒羊丘の戦い |
| 第6シリーズ | 2025年10月〜12月 | 全13話 | 鄴攻略戦(朱海平原) |
第1・第2シリーズはNHK BSプレミアム、第3シリーズ以降はNHK総合で放送。
監督は佐藤信介、信を山﨑賢人、嬴政を吉沢亮が演じる実写映画シリーズ。王騎役の大沢たかお、楊端和役の長澤まさみなど豪華なキャストと、中国ロケによる大規模な合戦シーンで、5作続けて興行収入50億円を超えるヒットとなっています。
信と嬴政の出会い、漂の死、王弟成蟜の反乱から王宮を取り戻すまで(原作1〜5巻)。
信の初陣となる魏との蛇甘平原の戦い。羌瘣が初登場する。
政の少年時代を救った紫夏の物語と、趙との馬陽の戦いの始まり。
馬陽の戦いの決着と王騎の最期。興行収入80億円を超え、シリーズ最高のヒットとなった。
馬陽から3年後、六国が手を結んで秦に攻め込む合従軍編へ。李牧役は小栗旬。
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中国古代史の研究者が、作中の場面を手がかりに秦の統一を支えた法家の思想や戦国時代の社会を解説する入門書。漫画と史実の橋渡しにちょうどよい一冊です。
『史記』そのものについては中国の歴史書、戦国時代を描いた小説は中国史を題材にした日本人小説家一覧で紹介しています。
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秦の天下統一という大きな流れと、嬴政・李信・李牧・王翦などの人物は『史記』に記録された史実です。ただし史書の記述はごく短いため、人物の性格や会話、戦いの細かな展開の多くは作者の創作です。漂・河了貂などのオリジナルの人物もいます。
実在します。秦の将軍李信で、燕の太子丹の追撃や楚攻め、燕・斉の平定に名前が見えます。ただし下僕出身という生い立ちや、若いころの活躍は記録になく創作です。
物語の始まりは嬴政が秦王になって間もない紀元前245年ごろで、戦国時代の末期にあたります。最新の展開では紀元前230年の韓の滅亡前後までが描かれており、天下統一(前221年)まではあと10年ほどです。
2026年8月発売の80巻が最新刊です(2026年10月時点)。『週刊ヤングジャンプ』で2006年から連載中で、累計発行部数は1億2000万部を超えています。
趙では李牧が讒言で殺され、前228年に趙が滅びます。続いて魏・楚・燕・斉が滅び、前221年に秦が天下を統一します。李信は楚攻めで大敗を喫しますが、その後も将軍として統一戦争の最後まで戦いました。
『キングダム』の舞台になった時代の出来事や人物は、年表・人物ページもあわせてご覧ください。