殷最後の王とされる紂は、寵姫妲己を溺愛して酒池肉林の享楽にふけり、諫言する重臣を残酷な刑罰で処したと伝えられ、後世「暴君」の典型として語られてきた。ただし紂王の暴虐を伝える逸話の多くは後代の文献、とりわけ殷を滅ぼした周の側の史料に由来しており、勝者による敗者への史観が誇張された形で反映されている可能性が指摘されている。近年の研究では、紂王は東方の異民族討伐を積極的に進めた有能な君主であった一面も指摘されており、単純な暴君像の見直しも進められている。この紂王をめぐる物語は、後世『封神演義』をはじめとする伝奇小説の題材として繰り返し脚色され、現代でも映像作品に描かれ続けている。