氐族ていぞく出身の苻堅ふけんは前秦ぜんしんの第三代君主として即位すると、漢人の名宰相王猛おうもうを登用して内政改革と軍備増強を進め、前燕ぜんえん・前涼ぜんりょう・代(拓跋部)などを次々に平定して華北のほぼ全域を統一するに至った。苻堅は異民族の融和を重視し、儒学の振興や仏教の保護(高僧道安どうあんの招聘など)にも力を入れたことで知られ、五胡十六国期の君主の中でも文治に意を用いた統治者と評される。王猛は死の間際、南の東晋とうしんを攻めるべきではないと諫めたと伝わるが、苻堅は統一の勢いに乗じて南征を決断することになる。