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南
南北朝 / 420 – 589

陶淵明とうえんめい

東晋とうしん末から劉宋りゅうそう初期を生きた詩人。官途を離れ田園生活を送り、理想郷を描いた『桃花源記』などの作品は後世の隠逸文学の規範となった。

陶淵明
『晩笑堂竹荘畫傳』 / Wikimedia Commons(パブリックドメイン)

生涯・業績

没落した官僚の家に生まれた陶淵明は、生計のためたびたび地方の下級官職に就いたものの、上役への追従や俗事にまみれる官界の暮らしになじめず、辞任と復職を繰り返した。40代のある日、上級役人の視察に卑屈に対応することを求められた際に「わずかな俸給のために腰を折って郷里の小人に仕えることはできない」と述べて官を辞し、以後は再び仕官することなく郷里で田園生活を送ったという逸話はよく知られている。

田園に帰ってからの心境を詠んだ『帰去来辞』や、日々の農耕と酒を愛する暮らしを描いた『飲酒』などの詩は、権勢や名利から距離を置き自然の中に安らぎを見出す価値観を鮮やかに表現し、後世「田園詩人」の始祖として位置づけられるようになった。とりわけ、争いのない理想郷に迷い込んだ漁師の物語を描いた『桃花源記』は、戦乱の絶えなかった時代への対比として理想郷(ユートピア)のイメージを中国文学に定着させ、「桃源郷とうげんきょう」という言葉の由来ともなった。生前は必ずしも高く評価されていなかったが、唐代以降に再評価が進み、後世の文人たちが理想とする隠逸の生き方の規範として長く尊ばれている。